あたしこの間ね、焼きそば食べたんですよ。ええ、あのカップのやつ。
コンビニで買ってきた普通の、なんてことないカップ焼きそばだったんですけどね。
とりあえずお湯を沸かして、その間に蓋を開けて、ソースやかやくを取り出すんだけど、なんかおかしい。なーんかおかしい。
おかしいなーと思ってよーく見てみると、ソースとかやくがね、無いんだ…。いくら探しても無い……。
おかしいな~麺の裏にでも入っちゃったのかな?と思ってひっくり返してみても入って無い。
メーカーのミスかなとも思ったんだけど、どうもそんな感じがしない。
それであたしはピーンときた。ああ、これは霊の仕業だって。
そう思った途端、ジワ~っと嫌~な汗が出てきてね。あ、これはいるな、こっちを見てるな、と。
今思えば、その時点でカップ焼きそばなんか食べるのやめときゃよかったんだけども、あの時はお腹が空いてたしもうお湯も沸いてたから、放っておくわけにもいかない。
しょうがないから味は中濃ソースか何かでつけちゃえと思ってお湯を注いでね、蓋をして三分待ってたんだけど、嫌な感じがなくならない。
首筋あたりにじーーーっと視線を感じるんだ。
あー、これはダメだ。ヤバいのが来てる。絶対に振り向いちゃいけない。
そう思ってあたしはもうひたすら前だけを見てたんです。ええ。
カップ焼きそばが出来上がるまでのほんの三分。だけども、あたしの人生の中であんなにも長い三分は経験したことがなかったね。
それでようやく三分経って、あとは湯切りをしなくちゃいけない。
カップを持ってシンクに向かうんだけれども、途中、段々、段々と視線が強くなっていく気がする。
嫌だな~怖いな~と思いながら恐る恐るカップを持ち上げて湯切りをした瞬間……!
バシャバシャバシャーッ!!!!
ベコンッ!!!!!
ああ、やっちゃったなと思いましたよ。
カップ焼きそばではよくあるアレね。
湯切りをしようとしたら蓋が外れてシンクの中に麺が全部落ちちゃった。
こりゃもう食べられないやとため息をついた瞬間、ふと気づくと、さっきまで背中に感じてた視線が嘘みたいに無くなってる。恐る恐る振り向いてみても誰もいない。
ああ、何か焼きそばに未練でもある霊だったのかなぁ、私で恨みを晴らしていったのかなぁ、なんて思いながらシンクに落ちた麺を片付けようとすると……。
黒いんだ。麺が。
いや、麺じゃない。そこにあったのは人間の髪の毛で、その奥からのぞいてる『何か』がこっちを見てる。
その『何か』と目があった瞬間、すーっと意識が遠のいて、気づいた時には朝になってた。
目が覚めて慌ててシンクの中を見てみると、そこには髪の毛なんか無くて、カピカピに乾いた麺の残骸だけ。
その時になってあたしはようやく気づいたんですよ。
ああ、やっぱりジェット湯切り考えた人は偉大だな、って――。